米崎小学校内グランドに立てたれた仮設住宅。近所のお爺さんも自転車修理に興味津々。
10月15日、もうお馴染みになったHonda、HRC,二輪開発センター、さらには関連企業の(株)ユタカ技研、(株)UCHIDAの有志の面々が陸前高田で自転車修理のボランティア活動を行われた。今回の会場は陸前高田の米崎小学校の敷地内にある仮設住宅。東北の沿岸部の大動脈である通称、浜街道、国道45号線の山側にあり津波の被害をまぬがれた場所でもある。そこに建つ60戸の住宅の人々に暖かく迎えられ今回もこのボランティア活動が大成功であった。その様子は、この活動のまとめ役であるHRCの小野信夫さんのリポートでご紹介いたします。
4回目 のボランティア活動(HRC 小野信夫)
『10月15日16日ホンダより自転車の無償修理と寄贈自転車配布があります』仮設住宅団地の郵便受けにチラシが配られた。今回で4回目となる我々の活動先は、初めての仮設住宅団地でのものだったが、自治会長さんのご協力で実現した。
当日は雨にも関わらず、チラシを見た住民の方々が、”ホンダのボランティア活動メンバーを待っていて下さったのだ。
早速簡易テントを張って埼玉から持ってきた寄贈する。自転車20台の多くは希望者に渡り、雨にもかかわらず喜んで自宅に持ち帰られました。
今回、関連会社(株)ユタカ技研さんから参加された2名は「テレビの映像から大きな被害がでていることは知っていたが、自分の目で直接被災地を見たとき、言葉を失った。被害は創造を超えている」(株)UCHIDAさんからは、「自分が被災者の立場であったら今後の生活設計が立てられない。大きな船が街の中まで押し流され、7ヶ月経った今でも手付かず状態はすさまじい被害だ」肩を落とす。
総勢11名で自転車修理の活動開始をすると、雨も次第に弱まり、次々と修理依頼が舞い込んだ。「空気を入れてもすぐにエアーが抜けて」60歳代の女性、「申し訳ないですね遠路から来ていただき、悪い箇所を直していただける、ありがとうございます」と両手を膝に合わせ、深々と頭を下げお礼を言う。「娘が高校に通学する自転車を点検してくれませんか」「仮設住宅から動くに自転車が一番いいが津波にあって痛んでいるので、直してほしい」次々と持ち込まれた。街に自転車屋が無く依頼後は皆、ほっとした状態で喜びを笑顔に変えて自宅に戻って行かれた。
持ち込まれる自転車の症状も様々。中にはクランクベアリングから異音が発生しており、分解して見るとボールベアリングが錆びて外周径が太り、異音がでていることが分かり、ベアリングを交換したところ、異音も消えスムーズな回転が戻るといった重傷のものもあり、避難所から仮設住宅へ移動して家族所有の自転車も増し、一家に3台所有の家族も多く点検修理に持ち込まれる自転車数も多い。
その中の一台にはとても大切な一台もあった。「財産全て津波に流された。何日も手がかりの品を探したが何も見つからなかった。3日目にこの自転車だけが見つかった。残り少ない人生をこの自転車と一緒に生きていく」とお爺さんは口数少なく話して下さった。
そのお話を聞きジワジワと目頭が熱くなってきて辛うじて「お爺さん分かりました。全て見させていただきますと」答えるのが精一杯だった。もっと話を聞きたかったが、被災状況を頭に浮かび、これ以上涙腺をコントロールすることができず、自転車を預かった。「この自転車は完璧に治してやりたい。末長くお爺さんと一緒に歩いてほしい」思いが気分を押し上げ細部に至るまで点検と修理を行った。
今回のように仮設住宅団地の活動は初めてでしたが、予想以上に自転車修理の依頼数が多く2日間で58台に達した。住民からのお礼、感謝の言葉をいただき、被災者の笑顔を見ることができ、メンバーの疲労も癒されました。
このような仮設住宅がこの街には数十箇所もあり、「多くの被災者が自転車修理を待ち望んでいる」と自治会長の佐藤さんは言う。メンバーは」一人でも多く方々に微力ながらお手伝いしよう』を合言葉に陸前高田をあとにしました。
予想以上に沢山の修理依頼があり、総動員で2日間、懸命に修理を行った。